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因果の探求

2013年3月刊

秋元ひろと編著

本体価格¥1143+税 IISBN978-4-903866-19-2 C1010







  
まえがき
T 因果と世界
    1.因果関係の判定基準               山岡 悦郎  1
  2.産褥熱の原因究明                小川眞里子  11
  3.運河がもたらしたもの              森脇由美子  25
  4.「語りえないこと」をめぐって
    ―因果・ユートピア・政治思想―         馬原 潤二  39
  5.心の因果性                   伊東 祐之  53

U 因果の思想
 1 西の思想史
    1.真の原因を求めて
       ―プラトンの対話篇『パイドン』を読むー   相澤 康隆   67
    2.ヒュームとマルブランシュ
       ―経験主義と合理主義の因果論―       秋元ひろと   81
    3.カントの因果論をめぐって          田中 綾乃   95
    4.自由の因果性と不滅の知性的霊魂―キリシタン
       時代におけるイエズス会宣教師と日本仏教との
       出逢い―                  桑原 直己  107
 2 東の思想史
    1.仏教における行為と因果―複人称の倫理    斎藤  明   121
    2.中国古代における儒家の因果         片倉 望   131
    3.中国絵画の伝統と西洋画法          藤田 伸也  145
    4.「天」の流行とその「命」          遠山 敦   159
参考文献                              169
索引       
   人名・署名・作品名索引                    173
   事項索引                           175
執筆者紹介

                        

作者:コメント

要旨:編集部

因果は,もともとは仏教思想に由来する語であり,日本語で因果といえば,それは独特のニュア
ンスをもつ言葉として受け止められるかもしれない。しかし,因果は,一般に原因と結果,また
それらのあいだの関係としての因果関係を意味する語でもある。そして,この意味での因果は,
いわば,われわれの生活の隅々にまで行き渡っている概念である。
 このことは,それがあまりにも身近であるため,かえって気づかれにくいかも知れない。しか
し,たとえば,昨晩セットした目覚ましが今朝鳴らなかった,という場合を考えてみよう。まず,
目覚ましをセットすることは,目覚ましが鳴れば(原因)目が覚める(結果)という因果関係の
把握を前提している。そして,実際には目覚ましは鳴らなかったのであるから,当然その原因が
問われることになろう。しかし,今はそれどころではない。とにかく急いで出かけなければなら
ない。約束の時間に遅刻すれば(原因)相手は怒る(結果)に違いないからである。案の定,相
手はかんかんである。そこで,事情を説明したうえで謝罪する。そして,この謝罪もまた,自分
が遅刻したので(原因)相手が怒った(結果)という因果関係の把握を前提している。
 あるいは,より深刻な場面としては,航空機の墜落事故の原因が問われる場面,いじめが自殺
の原因であったかどうかが問われる場面などがある。さらには,理論的な学問探究の場面,とく
に自然科学において,ある事象の原因を探るという仕方で因果関係の解明が行われることを考え
てもよいだろう。要するに,因果は,われわれ人間が行う世界把握とそれに基づくわれわれの行
為をその根底において支えている概念の一つなのである。
 本書は,この因果を主題として探究を進めたものである。


                                      


書評タイトル:原因と結果の関係

             

氏名: 片倉 望

             原因と結果の関係については、西洋では著名な研究としてヒュームの経験主義の
立場からの分析があり、東洋では「因果応報」に纏わる仏教の業思想に関連した無数の論考があ
って、個別研究、著作の類いは枚挙に暇が無い。しかしながら、古今東西、すべての因果を比較
対照しながら通観できる書物は意外なほどに少ない。 本書はその稀なる好著であって、人生の
中でふと立ち止まった時に、さらなる一歩を踏み出すために、貴重な助言を与えてくれる可能性
を秘めた一冊である。本書の「まえがき」には、「因果は,われわれ人間が行う世界把握とそれ
に基づくわれわれの行為をその根底において支えている概念である。そして、そうした概念の意
味を問い直すことは、われわれ自身の姿を問い直すことでもある。」と記されているが、まさし
く自らを鑑みる神器として本書が一読されることを期待してやまない。 



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