見所:
サクラマスの養殖 ―養殖の楽しみ―
昭和39年4月1日に山形県立加茂水産高校赴任、すぐに水産生物同好会を立ち上げ、翌年、水産生物
部に昇格。ニジマス・金魚・アワビ・サザエなどなど淡水産・海産魚介類を小規模の水槽や木箱の
池で飼育し始める。
好きなことを仕事にしたので、退屈はしなかった。毎日は楽しかった。小規模の水槽や木箱の池
で飼育し始めたニジマス・金魚・アワビ・サザエなどは、授業・実習・部活動で指導すると、年々
規模を拡大し、飼育魚介類も多種になる。定年後更に常勤9年、非常勤2年の「超過勤務」になっ
た。
「飼育手帳」とあるように、本書は飼育の実際を分りやすくコンパクトに書いたものである。普
通なら除外されやすい、施設・設備・道具も項目を設けて、使い方を書いた。水産校で使う副読本
でもあるため、備忘用に「要点テスト」を用意した他、養殖活動日誌も添付した。採卵・受精・孵
化・餌付けの過程は、分りやすく丁寧に、同じく魚病についても一度発症すると打撃が大きいので、
症状・予防・水質管理と、魚病根絶をめざして書かれている。
最近は、公民館の講座にも出席して、サクラマス飼育の話しをする。女性にも退職者にもこのサ
クラマスの飼育の話しをする。地元の加茂水族館には「サクラマス」を展示している。山形県の県
魚は「サクラマス」と定められている。
加茂水族館は別名「クラゲの水族館」とも呼ばれる。「くらげの館長」として知られる村上龍男
さんは、館長である以上に、川魚釣りの名人として知られている。その館長さんにサクラマスの推
薦を御願いした。桜の開花期に魚味の旬を迎えるというサクラマスの美味しさを語ってくれた。そ
の言葉もまた、なにより、とても分りやすい。
書評:サクラマスの養殖を考える 氏名 濱 洋文:
IT化にグローバル化が重なって、日本の老人は生きにくくなった。100年昔なら、隠居し、巡礼
すれば良かったのだが、その種のセイフティーネットはない。今にして思えば、農山漁村を捨て都
会に走ったことが「問題」だったのだが、問題だと言うだけなら、その種の「問題」は山の様に抱
えている。肝心なことは、「単純に考える」ことだろう。
最近は『蟹工船』『カラマーゾフの兄弟』など、複雑な本を読む若者が増えているが、老人にそれ
は間違っている。複雑な図書が得意な人、苦手な人。複雑なゲ−ムが好きな人、嫌いな人。入組んだ
交渉が向く人、向かない人がいる。
もし60歳を過ぎて、なお複雑な図書を読み、複雑な折衝やゲームに励もうとするなら、それはやめ
めることを勧める。それよりは、山や海に出て働くことを考えてはどうだろう。
狩猟をし、山菜を採り、果樹を育てる。すると、一生に一度かも知れないが、クマを撃った男や、
マグロを釣った男に出くわすことが出来る。アユよりも美味しい五月のヤマメ、銀鮭よりも美味し
い富山の五月鱒に出会うことがある。勝手な解釈だが、この本は、そういう退職後を過ごすための
図書だと思う。なにより、とても分りやすい。
|