石膏デッサンの100年
荒木慎也著
本体価格¥2800+税 '16/12/24刊 ISBN978-4-903866-36-9 C3017 A5版、221頁
目次
序章..西洋画教育の中の石膏像
1章パジャント胸像とは何者なのか...
...パジャント胸像とベレニケ胸像..「バシャント」から「パジャント」へ...
2章美の規範としての石膏像......
...古代美の規範としての石膏像..帝国主義と石膏像陳列場
..美術アカデミズム..芸術としてのデッサンの登場
3章工部美術学校と東京美術学校の石膏像収集....
...明治初期の石膏像導入..工部美術学校の石膏像..東京美術学校の
『旧台帳』海外から輸入した石膏像..石膏製作業者の登場
使われた石膏像 コレクションの不連続性..
4章東京美術学校の石膏陳列室
ボストン美術館はなぜ石膏像を寄贈したのか 日本への輸送方法
矢代幸雄と石膏像の選択 石膏像各論 象徴としての石膏陳列室
モデルとしての大石膏室
5章芸術の本質としてのデッサン..........
工部美術学校の擦筆画教育..黒田清輝の石膏デッサン論..
石膏デッサンの規格化 .芸術の本質としてのデッサン
..東京芸術大学の石膏デッサン論.
.6章反・石膏デッサン言説史(以下略)............
結論..あとがき 図版 巻末資料 引用文献
見所:石膏デッサンの100年
本書は、石膏像、石膏デッサン教育、美術系大学、美術予備校など、これまであまり日の当たらなかった
対象を掬い上げ、(…)より構築的な美術教育史の理解を進めることを目標に据えている。本書は、前半の
1章から3章で石膏像について論じ、後半の4章から6章で石膏デッサン教育について論じるという構成を
とっている。その中で、これまで正体が不明とされてきた石膏像のオリジナル彫刻、日本における石膏像収
集の歴史、近代と現代での石膏デッサンの違い、日本で石膏デッサン教育が普及した経緯、などの様々な事
象を明らかにする。これらの議論を通じて、石膏像の100年を、絶えざる価値観と制度の変転の中で繰り返し
新しい定義を与えられてきた流動的な歴史として再定義し、日本における西洋文化の受容が、単に「進んだ」
西洋の価値観を日本に不完全に移植したものでなく、その曲がりくねった歴史で構築された、対話的で越境
的な石膏デッサン言説の生成過程であることを示したい。
書評: